古代エジプト・ギリシャ・ローマの出産と子育て

古代エジプトギリシャ
ローマでの出産について、ごく簡単にご紹介します。

原文

https://eaglesanddragonspublishing.com/ancient-everyday-childbirth-in-the-ancient-world/

さて、男性である私の出産に関する意見や見解は、
やや限定的なものである。
私は父親であり、自分の子供の出産にも立ち会いましたが、
女性が小さな人間をこの世に誕生させるときの
神秘や苦悩を完全に理解しようとするつもりはありません。

産科の分野では、母子が妊娠・出産を安全に行えるような技術があり、
非常に恵まれていると言えるでしょう。

古代世界ではそうではありませんでした。
妊娠や出産は危険なことであり、
人生の多くの側面と同様に、
古代人は出産や出産に関して特定の神や女神に助けを求めた。

〈ベス〉

 

エジプト人はベスという神に祈りを捧げました。
ベスは結婚と歓楽の神であると同時に、
女性や子供の出産の守り神でもありました。
ベスは典型的なエジプトの神ではありません。
羽の冠をかぶった醜い小人として描かれ、
タンバリンを持っていることもある。

また、妃のタウアルトは、
地位の高低にかかわらず、
すべての女性の出産を助ける存在として祈られていた。

タウアルトは妊娠した雌のカバの姿で描かれている。

〈アルテミス〉

 

古代ギリシャでは、アルテミスという女神に
祈りや供物を捧げ、
クーロトロフォス(看護婦)と
ロケイア(出産を助ける者)という二つの諡号(おくりな)をつけていました。

さて、人々が処女の女神に出産の保護を祈るのは奇妙に思えるかもしれませんが、
神話では、アルテミスは、
母レトがデロス島でアポロを出産したときに立ち会ったと言われています。
彼女はある意味、最初の助産師と考えられています。

ヘカテー


古代ギリシャでは、出産で急死した女性は
アルテミスの矢で刺されて慈悲を受け、
苦しまずに死ぬことができると信じられていたのは興味深いことです。

また、古代ギリシャでは、
女性の女神、子育ての女神としてヘカテーに祈りを捧げ、
神々の女王であるヘラは、結婚の女神としての立場から出産の女神として活躍することもありました。

〈片面はシルフィウム植物のイメージ、もう片面はハート型のシルフィウム種子の古代コイン〉

 

ローマ人には、助けを求めるために祈る神々や女神がたくさんいましたが、
神々の女王であるユノは、まずルキナ、そしてオピゲーナという諡号で呼ばれました。

もう一人、大きな役割を担った女神がカルメンティスで、
水の女神でありながら、出産を守る予言の女神でもあった。
カルメンティスは、独自の祭り「カルメンタリア」を持ち、
カピトリーナの丘に神殿を構えていた。

ローマ人が安産を祈願した第三の女神は、
夜明けと若い成長の女神であるマトゥタであった。

祈る神がたくさんいることは快適だったはずですが、
それは同時にリスクの高さを示しているのかもしれません。

〈エジプトのカフン パピルス世界で最初に知られている婦人科の論文〉


子供を産むことはとても危険なことであり、
また、家族がすべての子供に食事を与えたり、
持参金を用意したりする余裕が必ずしもなかったため、古代エジプトギリシャ、ローマでは避妊が行われていた。

その方法の多くはハーブや植物を使ったもののようで、アカシア、蜂蜜、アンズレース、
ナツメヤシ、ヤナギ、アルテミシア、
ミルラ、今は絶滅したシルフィウムという植物などが含まれていたそうです。
これらの中には、今日、精子剤に使われているものもあるようです。

紀元前1850年頃のエジプトのカフン・パピルスには、
実は避妊に関する情報が多く含まれており、
最古の婦人科の専門書として知られています。

エジプト人の誕生古代エジプトデンデラ複合体にある寺院のレリーフは、

女性がしゃがんで出産し、2 人の女神に付き添われている様子を描いています。〉

 

しかし、私たちは古代の世界で子供を持つことについて話しているのです。
今日では、ほとんどの夫が(私は)妻をサポートするために部屋にいて、
子供が生まれるときにそこにいることを望みます。
出産は病院や分娩センターで行われ
(ほとんどの場合)、
医師や産科医が出産をサポートする。

古代世界では、出産は家庭で行われました。
コスやエピダウロスのようなヒーリングセンターを除いて病院はなく、
出産に「触れた」人は、
場所を汚すことを恐れて、
神聖な聖域に入ることを許されないことがよくあった。

エジプト、ギリシャ、ローマでは、助産師は常に存在した。
現代では、助産師が大活躍しているようですが、
古代世界では、女性の出産を手助けするのは、
常に助産師でした。
その技術や知識は相当なものでした。
古代ギリシャやローマで医者が呼ばれるのは、
合併症があった場合だけだったかもしれません。

〈出産椅子に座る女性のレリーフ


出産には、助産婦、家庭の女性(母親、祖母、叔母など)、
お手伝いの女性奴隷など、数人が立ち会うことが多かったようですが、
ほとんどの場合、男性は立ち会わなかったようです。

男性が同席するのはふさわしくないとされ、
呼ばれれば医師くらいしかいなかったかもしれない。

出産時の体勢はどうでしょうか?

さて、エジプトでは、
女性は日陰の場所やシェルターで
ひざまずいて出産することが多かったようです。

〈オスティアのプラークからローマの出産椅子と助産師〉


最近の病院のベッドでは、
女性はより寝た状態で、
背中を支えて出産するようになっています。

興味深いことに、古代ギリシャやローマ、
そしてその後の世紀では、
分娩用の椅子が使われていました。
これは基本的に木製の椅子で、
腕はあるが座面はないものだった。

助産婦は椅子の前の床にひざまずき、
そこから女性を助け、
その手はリネンやパピルスで包まれ、
赤ん坊を捕まえるときに滑らないようにするのです。

出産にもソファが使われたのかもしれませんが、
古代ギリシャやローマの助産師は、
プロフェッショナルな道具のひとつとして
分娩用の椅子をもっていたのかもしれませんね。

妊娠・出産における女性や子どもの死亡率は、
古代世界では高く、私が少し読んだ限りでは、
古代エジプトでは死のリスクが極めて高かったようです。
多くの女性が妊娠・出産で死亡し、
生まれた乳児も最初の数カ月を
生き延びられないことが多かった。

子供が生まれると、
通常は命名と祝福の儀式が行われた。

〈出産で亡くなった女性の墓碑〉

 

エジプトの儀式の詳細に関する情報は見つかりませんでしたが
エジプト学は私の専門分野ではありません)、
エジプトの宗教儀式において水は大きな役割を果たすため、
新生児のための儀式には水と洗礼が含まれていたかもしれないと読んだことがあります。
エジプトの宗教儀式では
水が重要な役割を果たすので、
新生児の儀式には水や洗礼が必要だったのかもしれません。

古代ギリシャでは、子供が生まれてから5日目か7日目に、
アンフィドロミアと呼ばれる
清めの儀式と祝祭があり、
そこで子供の名前がつけられました。

この儀式では、儀式と夜の宴会が行われ、
客は子供へのプレゼントを持参した。
男の子が生まれた場合、
家の外はオリーブの枝で飾られました。
女児の場合は、
外側に羊毛の花輪が飾られた。

古代ローマでは、命名の儀式は「ルストラティオ」と呼ばれ、
子供の誕生から9日目に行われました。
このとき、神々に供物を捧げ、祝宴を開き、
子供を客人に紹介した。

拙著『ヒドラを殺す』の21章で、ローマのラストラティオのことを書いています。

〈神々への供物を作る家族〉

 

現代人の多くは、子供の誕生を喜び以外の何物でもないでしょう。
そして、それは当然である!
男の子であろうと女の子であろうと、
健康な子供が生まれてくれば、
ほとんどの親は嬉しいものです。

しかし、古代の世界では、
家族観や子ども観は私たちのそれとはまったく異なるものだったのかもしれません。

古代エジプト人は家族を大切にし、
子供を愛していたようです。
それは、幸せそうな家族、母親に抱かれた赤ん坊、
遊んでいる子供たちの姿が
数多く残っていることからもわかります。

〈エジプトの女性と子供たち〉

 

古代ギリシャやローマでは、
子どもはあまり目立たないようにし、
女性と一緒に家の中にいました。
ギリシアでは生まれた時点で、
父親や保護者が子供を育てるかどうかを決めていました。

ローマでも、父権者は家族の生殺与奪の権を握っており、
父親が養育権を否定できる新生児も含まれていた。

古代ギリシャやローマでは子供は晒し者にされたり、
殺されたりすることもあり、
公の場には居場所がありませんでした。

また、場所によっても習慣が異なっていた。
例えば、古代アテネでは、
子供を育てる場合は抱っこしていたのですが、
スパルタでは子供は全く抱っこしていませんでした。

現代人の感覚からすると、
確かに厳しいと感じるかもしれませんが、
実は、もし子どもが生まれても、
その有用性や残すかどうかは、
性別、その家にすでにいる子どもの数、
その子どもを養う能力、
将来の持参金の必要性、
健康状態などを考慮して決められることが多かったようです。

古代ギリシャの子供のおもちゃ〉

 

奇妙なことですが、たいていの場合、
混沌とした現代社会よりも、
過去のほうがずっとエキサイティングで面白く、
美しかったと思う傾向があります。
ほとんどの歴史家が、
自分は間違った時代に生まれてしまったと感じているのではないでしょうか!

しかし、古代世界での妊娠や
健康、出産、子どものことなどについて読むと、
今の時代に生きていることに感謝したくなりますね。

決して完璧ではありませんが、
出産に関しては、古代の日常の中で、その部分を見逃すことはないでしょう。

アッティカのブラウロンにあるアルテミス聖域の子供たちの像、古代の孤児院の場所〉

 

また、古代ギリシャやローマの子どもたちが皆、ひどい扱いを受けていたと考えるのはやめましょう。
そのような過酷な社会であったとしても、
自然は多くの子どもたちの母親と父親に、
時代を超えて力強く子孫を大切にする
愛と必要性を植え付けたと私は思っています。

アフロディーテとアンキセスと赤ちゃんアエネアス

Ancient Everyday