カラスの守り神レイブンとブリティッシュ・コロンビア先住民の口承伝承

アリソン・マイヤー /ロブ・リッチ
2010年6月24日
https://www.atlasobscura.com/articles/ravenoraltraditionbccontest

鬱蒼とした森が霧の立ち込める
岩の海岸を縁取る太平洋岸北西部では、
動物の霊の話はよくある。

鴉(カラス)のキャラクターは、
ブリティッシュコロンビア州
先住民の口承伝承では、特に中心的な存在である。

創造者であると同時に
トリックスターとしても描かれるカラスの活躍は、
ツィムシャン族、ハイダ族、
ハイルツク族、トリンギット族、
クワキウトル族の
何百もの物語で語られている。

カラスは、凍てつく北極から灼熱の北アフリカまで、
驚くほど多様な気候で生き延びるが、
ブリティッシュ・コロンビアに見られるような
森林の多い海岸を好む。

適応力に加え、驚くほど知的で、道具を使いこなし、
人間の声を含むほとんどすべての
音を真似ることで知られている。
これらの鳥と同様、
神話のカラスも賢く機知に富んでいる。
ある物語では世界の創造主であり、
次の物語ではいたずら好きで
大食漢のトリックスターに変身する。

口承物語は長く寒い冬を埋めるのに役立ち、
ダンスや儀式にも取り入れられた。
そのひとつが変身仮面である。
大きな機械仕掛けの仮面で、
彫刻された人間の顔を
動物の下に見せたり隠したりする。

カラスはしばしばシェイプシフターと表現され、
ダンサーたちは仮面を開閉することで
鳥から人間へと変化し、
物語の重要なポイントで変身することができる。

ある創世神話では、
レイブンは浜辺で見つけた貝殻から
最初の人間を誘い出し、
別の神話では油のボールから太陽を作り出した。
またある神話では、
レイブンは粘土から人間を作り出し、
氷河期を思い出させるために
10匹目の熊をすべて白熊にした。

ハイダ族の物語では、
レイブンは水に覆われた世界を飛び回って
空腹になり、
空の国に行って酋長の娘の赤ん坊の身代わりになる。
夜になると、村人から片目ずつ抜き取って食べる。
半盲の空の民によって地上に追放された彼は、
祖父のカモメに引き取られ、
くちばしで割って海に投げる石を与えられる。
この破片がハイダ・グワイとなる。

「カラスと最初の男たち」ビル・リード作、人類学博物館、UBC、バンクーバーブリティッシュ・コロンビア

ほとんどの物語において、
150以上の島々からなる
ハイダ・グワイ諸島は、時が始まり、
人々が初めてこの世界につまずいた場所である。
レイブンはほとんどいつもそこにいる。

現在のハイダグワイでも、彼はそこにいる。
島々に点在するトーテムポールからは
カラスのくちばしが突き出し、
家々の正面にはカラスの横顔が描かれている。

諸島の最南端に位置する
グワイ・ハーナス国立公園保護区と
ハイダ・ヘリテージ・サイトには、
1万年以上前から人類が定住しており、
その痕跡は遺体安置用のポールや
カヌーの上陸地点の輪郭、
コケに覆われた丸太造りの住居跡などに
刻み込まれている。

レイブンを描いたものを含むトーテムポールは、
博物館に運ばれることなく
土の中に放置されている。
霧に包まれた浜辺には、
今も古代の神秘が残されている。
レイブンのように砂浜を歩けば、
貝殻の中でつぶやく声が聞こえてきそうだ。

https://spiritsofthewestcoast.com/collections/the-raven-symbol

いたずら好きで好奇心旺盛なカラスは、
北米西海岸
(パシフィック・ノースウェスト・コースト文化)において多くの重要な役割を担っている。

カラスは創造、変容、知識、威信、 
そして自然の複雑さと  
真実の微妙さを象徴している。
また、未知なるものを象徴し、
人はそれぞれ違った方法で

世界を見ていることを示す。

賢明な長老たちは、
目に見えるものが真実とは限らないことを
知っていたため、
カラスはしばしばビジョンで
真実を明らかにするよう求められた。

北米西海岸の多くの人々は、
カラスを創造主へのヘルパーと呼び、
宇宙の創造主からのメッセージは
カラスの翼の中に封印され、
カラスの知識を最も必要とする
家族にのみ解放されると信じている。
カラスは遠距離ヒーラーであり、
「秘密の番人」として知られている。

 

カラスは、私たちに
危害を加える可能性のある秘密の
真実を暴くことで、
私たちの生活を助け、
私たちを健康な状態に戻してくれる。
レイブンは悪用された場合にのみ恐れられる。

カラスのシンボルとファーストネーション

ハイダ族北西海岸先住民の子孫の多くは、
さまざまな氏族に属するだけでなく、
レイブン・クランか
イーグル・クランのどちらかに属しています。
母親がどちらの氏族に属していたかによって、
その所属が決まることが多い。

ノースウエスト・コーストの 
多くのコミュニティでは、
レイブンとその数々の功績についての
物語が語られています。 
最も一般的な話のひとつは、
カラスが太陽、月、星の形をした
光を盗んだというものである。

レイブンは赤ちゃんに変身して
光の隠し場所を突き止め、
それを大きな曲げ木の箱に入れて
家に保管していた年老いた酋長から
盗んだという話が多い。


レイブンはその箱を持って

家の煙穴から逃げ出した後、
太陽と月と星を空に置き、
すべての生き物が楽しめるようにした。
もともと白い羽を持っていたレイヴンは、
光とともに煙の穴を飛び越えた後、
羽が黒くなり、今日まで黒いままだった。

ハイダ族は、レイブンが 
ビーバー族から鮭を盗んだことを伝えている。
レイブンは再び酋長の赤ちゃんに変身し、
ビーバー族が他のすべての生き物から
サケを隠している場所を突き止めた。
何年もビーバー族と暮らした後、 
彼はついにビーバー族が鮭を
湖に流れ込む小川に隠していることを
突き止めた。

 
それを知ったその日の夜、
彼はレイブンに戻って 
小川と湖を絨毯のように巻き上げ、
太平洋西海岸を飛び回って
ハイダグワイに戻った。
サーモンがたくさんいる小川と湖はとても重く、
彼は一度に短い距離しか
飛ぶことができなかった。
木があればどこでも止まって休んだ。
ビーバー族は彼を止めるために
ビーバーに姿を変えた。
彼らはレイヴンが立ち止まる木を齧り、
そのたびに鮭と水が逃げ出し、
国中に鮭の大河ができた。

もうひとつのハイダ神話は、
「盲目のオヒョウ漁師とくちばしの折れたカラス」の物語である。
この神話では、
盲目の男が一人でカヌーに乗り、
釣り糸の手入れをしている。
カラスは漁師をからかおうと、
釣り糸を何度も引っ張る。

漁師は突然釣り糸を引っ張り、
カラスのくちばしに引っかかって
釣り糸が切れてしまった。
何が自分の釣り針にかかったのか
わからなくなった盲目の男は、  
娘に頼んでお札を棒にさして
家の上に上げてもらった。
恥ずかしくなったレイブンは海から顔を出し、
くちばしを顔に付け直そうとしたが、
滑ってあごに付いてしまい、
さらに恥をかいた。

レイブンは、北西海岸の神話と
芸術において最も重要な生き物の 1 つです。
彼は、多くのコミュニティや
北米北西海岸沿いの先住民族にとって、 
力強い文化的中心人物であり、象徴です。
紋章としても守護霊としても。